フルコンタクトKARATEマガジン vol.13 2017年4月号

禅の道歩みてまれびとに遭う 第4回 [終]

禅の道歩みてまれびとに遭う 第4回 [終]

小沢隆が出会った「エジソン・アインシュタインスクール協会」の代表理事・鈴木昭平。近年増加の一途をたどる発達障害の子供への教育方法を提唱し、指導実績を積み重ねてきた。鈴木の提唱する知育のノウハウを聞いた小沢は、禅道会でも起こったケースを想起して共通点を見出した。そして、二人はそのノウハウを発展させ、活かす方向への話へと発展していく。
(本文敬称略)

知育のノウハウとは?

小沢潜在意識優位の時に色んな情報を入れればすんなり学習できる、ということが正しいとするなら、スポーツにおいても「勝つイメージ」を潜在意識優位の時に早く入れていって学ばせる、といった具合に応用して、スポーツ能力向上にも役立てられますよね。
鈴木右脳を活性化したら、動物レベルで反応するわけですから、凄いんですよ。これが一流、超一流という人間の体の使い方なんです。それが訓練できるんです。
小沢そこら辺は、お話を聞いて自分たちにも合点がいくところでもあります。かなり心理学系の学習もこなしてきましたから確かにそういう可能性は高いな、と実感します。
鈴木体をしっかり作って、毎日のストレスを解消してもらってぐっすり眠ってもらったら、改善は早いです。そういった意味で、体をしっかり使うというのは素晴らしいプログラムになると思うんですよ。これはね、本当に世界に貢献できるプログラムになる可能性が高いです。「空手」という一つのブランドを使ってですね、日本から世界に発信してもらいたい。
――実際にお預かりした引きこもりの人で、運動をこなしてこなかった人が入ってきてから変わった例というのはあるんですか?
小沢この間、弁理士試験に合格した子ならいました。その子は女の子なんですが、17歳までに悪いことはあらかたやった、みたいな生活を送っていた子だったんで、会った瞬間から絶対危ないな、と感じさせる子でした。禅道会で預かっていて、その後は最初看護学校に行って看護師の資格を取ったんです。それでも人間関係がうまくいかなくなって、看護師は辞めたんです。でも、23歳になったこの間、合格率10%と言われていて、通常何年も勉強して取得する弁理士の資格を僅か1年の勉強で取りました。もうこの場でも話せないような悪いことをさんざんやったような子だったんですがねぇ。
鈴木人間関係を構築し、対応する能力がまだまだ足りなかっただけですね。情報を処理して、それを記憶して判断する能力そのものは強いわけです
。つまり、優秀な脳は持っているわけですよ。それを上手くコントロールできないから社会化しないわけです。そこをコントロールできるようになれば人間関係も上手く出来ます。そうすると社会的にも大きく活躍できるようになる。元々そういう試験勉強とかに強いのは、右脳で大量に情報を吸収し処理できるからです。つまり、スーパーコンピューターを持っているわけです。それを上手く使えるようになってきて、高度な資格試験にも合格したんでしょうね。
小沢まあ、左脳優位な世の中ではありますが、その子みたいに右脳が元々発達していたら、それを活かして成功する可能性は当然高い、ということもありますしね。

エジソン・アインシュタインスクール協会が主催するセミナーで、多くの来場者に自身が提唱した学習方法を解説する鈴木。
エジソン・アインシュタインスクール協会が主催するセミナーで、多くの来場者に自身が提唱した学習方法を解説する鈴木。

――その子は道場とかできちんと稽古していたのですか?
小沢ほとんど最後までチンタラやっていました(笑)。その子に関しては、他者との関係性の問題が残っていたので、その後も1日40件くらいの電話がかかってきてましたが。それに関しては、大人との関係性でなんとかなったというケースですけども。ケアとしては、呼吸法くらいはやらしてました。
――どういう接し方で対処したんですか?
小沢単純な理屈として、私たち指導者が自分のモノサシで人を判断しない、人を裁かない、という方法です。例えばとんでもないことをやる子がいるわけです。寮に来ていた小動物を殺したりする子もいるんです。そんな場合でも、自分の善悪で相手を判断しないということを心がけるようにしていました。でも考えてみると、これは武道の礼の精神なんですよ。自分のモノサシではなく万物全てに礼をしよう、という基本的な考え方です。日本は八百万の神の国で、一神教ではなく、だから全てのものに精霊が宿っているというような基本的な考え方が礼の精神を作っていると思うんです。そういう意味では、発達障害の子は障害者なのか、天才の卵なのかというフレームの問題ではありますよね。フレームって時代によって変わってくるんで、それに振り回されずに、そのものを受け入れようという、単純な評価はしないでおこう、と考えて接していました。

全てを受け入れる

同じセミナーで、禅道会での指導経験をまじえて説明する小沢。
同じセミナーで、禅道会での指導経験をまじえて説明する小沢。

――とりあえず、固定概念にとらわれず、全てのものを排除することなく受け入れてみよう、という考え方ですね。
小沢日本の古くからの武道で言うと、相撲なんかも横綱クラスなら、相手の攻めを受けた上で勝とう、という考え方がありますよね。自分から攻めてはいけない、そういう、日本の伝統性の中に裏付けられています。
――そういう意味では、道場の指導だけというよりは生活全般に至るわけですね。
小沢もちろん、引き取って寮生活の中で指導していくわけですから。全部受け入れるっていう心構えは、日本の自然崇拝から来ているんです。日本は狩猟生活、縄文時代が他の民族と比べても長いんです。1万2千年も狩猟生活だったので、アニミズムみたいなものが心の中に根付いているんじゃないかと。様々なものに礼をしよう、死んでしまえば誰でも神様、という考え方があったと思うし。自分はそれは良い考え方だと思うんです。一人の神様が天罰を下す、最後の審判をする、という考え方が無い。それなのに、「この人は社会に有益か無益か」という目線だけで最初に見てしまったら、なかなか大変です。しかも、子供の頃からずっとダメ出しされているわけです。「この人は自分を裁かない人だ」と信頼されないと、関係性ができないんです。
鈴木エジソンもそうだったんですね。「1たす1は2」というのが理解出来なくて、先生から「おまえの頭は腐っている」って言われたんです。それがきっかけで不登校になって退学したんですけど、お母さんはエジソンの頭が腐っているなんて思わなかった。それで、やりたいようにやらせてみた。化学実験がやりたいと言ったらやらせて、結果的に納屋を燃やしたりしているんです。それから新聞を作って列車の中で売り出したり、電信技術を学んで、少年電信技師として働いているんです。そういう好きなことをやっているから楽しいわけですよ。そういう取り組みをしたから、上手くいって発明王になれたんです。あのまま小学校に嫌々通っていたら、困った子供で終わっていたでしょう。だから、各家庭でそういう取り組みをやっていただきたいし、道場とも連携してやっていけたらいいんだろう、と思うんです。

対談での二人の会話は弾み、やがて多神教崇拝をするようになり、礼の文化を育んできた日本の歴史的見地に基づく内容にまで及んだ。
対談での二人の会話は弾み、やがて多神教崇拝をするようになり、礼の文化を育んできた日本の歴史的見地に基づく内容にまで及んだ。

――現在の生活環境では、家庭では共働きとかでできないかもしれませんが、その分を道場がまかなえればいいのではないか、とも考えられますよね。
鈴木そう、それと家庭でも睡眠と食事をちょっと変えてもらえるとありがたいです。脳に良い食事というのがあるんです。血液の質を上げる食事です。そして睡眠を深く取らせる。それと私が提唱しているのが高速学習なんですが、高速なので時間がかからないんです。だから、繰り返しが利くんです。1日30分の勉強で、高校受験の準備が十分できる、というシステムなんです。我々が作ったシステムをぜひ活用していただきたいんです。道場が全部学習塾になっちゃうかも(笑)。
小沢本来の目的を達成しながら学力も向上できたら、良いですよねぇ。「頭が良くなる武道空手・少年コース」なんか作って。武道というものの核には、頭が良くなる可能性もあるんです。それを先ほど鈴木先生がおっしゃったような方法を付け加えれば、「空手道場に通って成績が上がった」というケースも出てくるんじゃないかな、と思うんです。
鈴木しかも、高速に楽しく歌で覚えるんですよ。歌というのは、一種の教育法なんです。最初のワンフレーズが出れば、最後まで出やすくなるんです。キーワードを言えて書けただけで点数になる、それができれば知識のベースが作られる。その方法なら、高校受験の準備は誰でもできるようになります。それを学校の授業とは別にやってもらいたいんです。

<終>

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